雑記2

朝とは、文字盤の上を動く長針と短針が表すものではなかった。 地平線が燃え上がり、夜空が駆逐され、そこに自らの影を見出すことであった。 冷風が額を貫く。空気のなかには蜜の味。

過ぎゆく日常、福香る

この一年間で最も通った店はおそらくここだろう。 スタンプを17回押したら1食無料になるポイントカードは、現在3枚目に差し掛かっている。 元気な日も、疲れた日も、暖かい料理で迎えてくれた。 山盛りのチャーハン、唐揚げ丼。 生の玉ねぎが敷いてある麻婆…

標本は語る

昨年採ったヤエマルの標本が完成したので標本箱に入れることに。 箱に入れる前に、採集地や採集年月日などを記した「データラベル」と、採集した虫の学名などを記した「同定ラベル」をつける。 様々な情報が載ったラベルを付けることで、その虫に標本として…

アマガエルについて

先日、職場の人との宴席で最近の趣味について聞かれ、咄嗟にこう答えた。 「植物園でアマガエルを探し、写真に収めることです」 目の前の上司が怪訝な表情を浮かべていたので補足する。 「一匹一匹に個性があります。神経質なやつ、緊張するやつ、のんびりし…

雑記1

主題は繰り返される。 何度も塗り直される地。 遠目では混沌でも、近づけば全ての色が必要なことに気付く。 既知の隣に、際限なく広がる無知。 知れば知るほど、謙虚にならざるを得ない。 「なりたい」には「なれない」。 別人の何者かになるのではなく、内…

昨日の植物園

花盛りだった。 桜は散り始めている。 散った花弁がいつもの風景に交じる。 花はいつしか散る。 散ることで、限りあることを示してくれる。 その儚さが、花をより一層美しくさせる。 ヤマブキやツツジも見事だった。 園内に色が一気に増えた。 花々、若葉、…

4年後

この週末は各所で桜が見頃を迎えている。 午後に大学の並木を見に行った。 木々は枝から溢れんばかりの花をたたえ、見物客で賑わう。 一年のうち僅かしかないこのひとときを、みんな待ち望んでいたのだ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー こ…

ようやっとの再会

2日続けて植物園参り。 昨日は沢山の花を観察できてよかったのだが、ひとつ心残りがあった。 アマガエルである。 毎年この時期になると冬眠から覚めて活動を始める。今年も既に鳴き声は確認していた。 でも、見つからない。その姿を見つからないのである。こ…

働きながらの読書

年が明けてから、本をよく読むようになった。 小説、ノンフィクション、詩集、専門書、 新しく買った本、昔に読んだ本、買ったけど棚に眠っていた本、 いまは同時並行で5、6冊読んでいる。 社会人になってからは、久しく読書から離れてしまっていた。 仕事が…

今日の植物園

閉園30分前に滑り込み。 短い時間なので手前のエリアだけ散策したが、思いの外色々な花を見つけられた。 園内に彩りが増えてきて、楽しい季節である。 花が咲くと、香りに気づく。 ヒサカキ、沈丁花などが芳香を漂わせる。 春の匂いだ。 匂いと記憶は密接に…

つくば蘭展2024春

植物園で開催中の特別展へ。今回は蘭がテーマ。蘭展は毎年行われているが、毎回少しずつ焦点を変えている。 今回の目玉はJuel Orchid(宝石ラン)だ。 その名の通り、葉が宝石のように艶々とした光沢を放っている。しばらく釘付けになってしまった。蘭は花だけ…

春の野山へ

デスクワークを始めて一年が経とうとしている。近頃は明らかに体力が落ちた。ちょっと駆け足で走っただけで、数階分の階段昇降だけですぐ筋肉痛になってしまう体たらく。 これでは「夏」に戦えないと思い、久しぶりにハイキングへ行くことにした。そろそろ春…

回想、2023年小笠原諸島

3月2日。ちょうど一年前の今日、学生最後の旅に出た。 行き先は、小笠原諸島。 片道丸一日かかる1000km超の船旅。 その先に待っている独自の自然。 それだけでロマンを感じる。 当時は、学生時代が終わってしまう名残惜しさと、社会人としてのスタートに漠然…

早花咲月

2月は逃げ、気づけば3月。 今日は植物園の前に河津桜を見に行くことに。 池のほとりに株立つ一本の立派な木で、学生時代から見に行っていた場所だ。 訪れると、ちょうど満開。枝先までびっしりと花をつけている。 見上げれば青空がピンク色に覆い隠されてし…

野菜が主役、肉は添え物

一人暮らしを始めてから、自炊をする機会が増えた。 基本的には煮るか炒めるかでまとめて何食分か調理する。その時々で食材と味付けを変えれば、さほど飽きない。 レシピはあまり見ない。それ故に塩加減や火の通し具合を見誤ることもあるし、せっかく美味し…

今日の植物園

今週前半は気温が上がったが、昨日は寒の戻りで冷え込み、雪もちらついた。 今日は晴れているけれど、気温は低い。 14時頃に訪園。 梅が散っていた。 梅の木は咲く期間が短いにも関わらず、日本中のそこかしこに植えられている。 多くの草木が目覚めておらず…

2024年沖縄島観光、食について

先週の連休は、職場の同期3人で沖縄旅行に出かけた。 乗継以外で沖縄島に立つのは2019年の遠征以来、5年ぶりである。 当時は採集遠征で、観光らしいこともほとんどしなかった。だから今回の旅は新鮮な心持ちで楽しみにしていた。 ーーーーーーーーーーーーー…

梅の園

東京へ出かける用事があったので、その前に近所の公園へ。気温も丁度良く、散歩日和である。 梅の木が沢山あると聞いていたので初めて行ってみたわけだが、想像以上だった。 どの木も満開だ。 シートを広げて花見をする家族連れで賑やかな、温かな雰囲気であ…

今日の植物園

2週間ぶりの来園。 植物園に向かいながら、この時間を必要としていた自分に気づく。 漫然と歩きながら、目に留まった草花を観察し写真に収める。 彼らの小さな変化を見逃さないよう、注意深くまなざす。 安息と集中の同居。そこに使命感や義務感は無く、何の…

回想、2020年奄美大島

生き物を愛好する人、或いは研究する界隈では〇〇屋と呼称する風潮がある。 すごく大雑把に言うと、例えばチョウが好きな人は蝶屋、飼育が好きな人は飼育屋、といった具合に自称し、互いの専門を認識し合う。 私の場合、今でこそクワガタを採集するために方…

回想、2020年深夜徘徊

人生で最も何かに没頭した時間はいつ? 人生で最も濃密だった時間はいつ? 私は迷わず「2020年」と答える。 2020年は春先から晩秋まで、毎晩のように夜の森へ出かけた。私の在籍した大学は敷地の大半が森に覆われている。 目的は、虫を観察するため。 この森…

今日の植物園

昼下がりに訪問。 昨日と打って変わって曇天模様で寒々しい。 ここでも梅が見頃。 今日も枝分かれや枯れ葉を見つめながら散策する。 途中、近頃はカメラの画面を通した姿しか見ていないことに気づく。 肉眼で細部の細部を凝視する感覚、一周まわって新鮮であ…

或る土曜日

今日は土曜日。 いい土曜日だった。 そんな気がするので、ここに書き記すこととする。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー AM まず、目覚めが良かった。 正確には二度寝後の目覚め。 8時頃に一旦起きて朝食を食べ、歯を磨いて髭を剃り、再びベッド…

回想、2019沖縄島

何事にも、始まりがある。 最初の経験は特別なものである。 2019年夏の沖縄は初めての採集遠征だった。 虫を採るためだけに南の島まで赴くなど、大学に入った頃は思ってもみなかった。 未知なる世界の入口に立った気がして、強い興奮を覚えた。 現地では、大…

お決まりの風物詩

昨日の午後は梅を見た後、ある虫を探しに行った。 向かった先は、エノキの大木の下。 根本にしゃがみ、堆積した落ち葉を一枚一枚丹念に裏返す。根気を要する作業。つくばで過ごす冬は、毎年一度はこうして探している。 15分ほど経っただろうか、ある一枚の落…

土曜日の朝日

車を買ってから迎える最初の週末、やりたいことは決まっていた。 いつもの場所に朝日を見に行く。 5時前。外はまだ夜が支配する。 煌々と輝く満月に照らされた。星は前回ほどは見えなさそうだ。 今までは寒さに耐えながら自転車を漕いで行っていたが、その苦…

今日の植物園

2週間ぶりの植物園。 昼過ぎの日差しが暖かい。 いつも通り野菜コーナーから見ていくと、白菜やタアサイがパリッとした葉を広げている。 この時期は梅の花が見頃を迎え始める。先々週は蕾だった花が一斉に開花していた。近づくと芳香が漂う。来園者はみな足…

再開

書いては途絶えてを繰り返していたブログを再開します。ハンドルネームもブログ名も心機一転。 「自分だけの採集記を紙の冊子で出したい」というちょっとした夢があるのですが、仕事や日々の疲れで先延ばしになりそうな予感があります。 とりあえず、目の当…

トクノコアマノコ成虫管理

修士論文を提出して一段落したので、やっておきたい虫活に取り組んでいます。 生きものの世話は後回しにできないので、まずはトクノコとアマノコの成虫管理から始めることに。掘り出してルアケで保管していた個体はぬれティッシュを交換。数ヶ月間ワインセラ…

9/27ナミゲンゴロウ採集記

北海道の虫シーズンも終盤である。9月はヒメオオもルリオサも採り、後半は博物館実習で忙しかった。 北海道での採集もおしまいか...と感傷に浸っていたら、実習先で“ある虫”が展示されているのを目にした。 ナミゲンゴロウである。このサイズ感、洗練された…