一人暮らしを始めてから、自炊をする機会が増えた。
基本的には煮るか炒めるかでまとめて何食分か調理する。その時々で食材と味付けを変えれば、さほど飽きない。
レシピはあまり見ない。それ故に塩加減や火の通し具合を見誤ることもあるし、せっかく美味しく出来ても再現性に乏しい。
一期一会でよし、ということにしている。
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そんな試行錯誤(?)の日々のなか、今夜は待望のヒット作が生まれた。
その名は、大根ステーキ。
作ったきっかけは、本当にさっきの思いつきである。
今日の夕飯は煮物。出汁の染みた熱々の大根を頬張りながら、ふと思った。
「これ、表面にカリッと焦げ目をつけて焼いたら美味いのでは??」
根拠は無い。
せっかくの染みしみ大根たちを、失敗作に生まれ変わらせるのは酷な話。
少々迷ったが、大体こういうときは好奇心が勝ってしまう。はやる気持ちを抑えて台所へ向かい、熱したフライパンへ12個の煮大根をぶち込んだ。
ジュー。
大根が良い音を立てる。
仮に不味かろうとも、満足できる音だ。
軽く焦げ目が付くまで焼き、仕上げに塩胡椒とバター醤油を纏わせる。
冷蔵庫に余っていた豚肉とエリンギ少々も「添え物」として焼く。
完成。
センスが無いなりにそれっぽく盛ってみた。
夕食は済ませているので、今は味見程度にしておく。
これで不味かったら目も当てられないが、いざ実食。
…
…
和風か洋風か知らないが、美味い!
味見が美味しさのピークであることを差引いても、美味い!
外側のバター醤油のカリッとした焦げ目、内側のダシしみしみ大根の部分。火加減がたまたま良かったようだ。
しばらくは良い食事を楽しめそうで、ひと安心。
先にも述べたが、再現性が無いため同じ材料が揃っても改めて作れる自信がない。(ので、研究としては失敗の部類だろう)
でも毎日作っていると稀に、今日のような「当たり料理」に出会うこともある。
料理下手ゆえに、ギャンブルさながらだ。
食べてみたくなった人は、適当に切って煮た大根を適当に焼いてみてください。