土曜日の朝日

車を買ってから迎える最初の週末、やりたいことは決まっていた。

いつもの場所に朝日を見に行く。

5時前。外はまだ夜が支配する。

煌々と輝く満月に照らされた。星は前回ほどは見えなさそうだ。

今までは寒さに耐えながら自転車を漕いで行っていたが、その苦労はもうしなくてよい。

 

暖房を効かせた車であっという間に到着。外気温計はマイナス4度を示している。

車外に出ると、引き締まった寒気に全身を包み込まれた。

風はほぼ無風。月から遠い空には星がよく見える。

しばらく待つと、東の空が赤くなってきた。

それは次第に白みを帯び、赤さは程なく失われてしまう。僅かな時間だが、一日において最もダイナミックな時間である。

このひとときが一日で、一週間で、最も好きだ。

手足は痛いほどに冷え切っている。

しばらく地平線を見てからそのまま少し視点を上げると、夜の部分がサーっと引き潮のように退いて見える。

朝日が夜の基層を一枚ずつ剥がしていく。

遠くでは鶏が鳴き始める。

 

残念なことに、普段の忙しない生活における朝は「時刻」でしかなく、サイクル化された日々の一部分に過ぎない。

だから、たまにはこうして朝が朝であることを確かめ、朝を五感で理解するのは大切だと思う。これからもこの感覚を失いたくない。