花盛りだった。
桜は散り始めている。
散った花弁がいつもの風景に交じる。
花はいつしか散る。
散ることで、限りあることを示してくれる。
その儚さが、花をより一層美しくさせる。
ヤマブキやツツジも見事だった。
園内に色が一気に増えた。
花々、若葉、蝶々...
寒さによる緊張から解け、のびのびと生きている。それは散策する人間も同じこと。
先週は無かったものが生まれ、在ったものが消え去る。
繰り返される季節だけれど、同じ瞬間は二度と訪れない。
言葉や写真に残すのは、そうした宿命へのささやかな抵抗なのかもしれない。
出会いというものは、その内に偶然性を多分に含んでいる。
一度限りの出会いを簡単には手放したくない。
桜が散ったら、初夏の気配が少しずつ増してくる。生き物が最も輝きを放つ時期。
そろそろ遠くへも足を延ばそうと思う。