春の野山へ

デスクワークを始めて一年が経とうとしている。近頃は明らかに体力が落ちた。ちょっと駆け足で走っただけで、数階分の階段昇降だけですぐ筋肉痛になってしまう体たらく。

これでは「夏」に戦えないと思い、久しぶりにハイキングへ行くことにした。そろそろ春の雰囲気も感じたかったので丁度いい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

土曜の朝、少し寝坊して9時過ぎ自宅発になってしまった。すでに麓の駐車場は満車。この時期、この時間帯はやはり人が多い。

今まで履いていた軽登山靴はソールが逝ってしまったので、マルバネ採集用の地下足袋で登る。履き心地に慣れると、足運びが軽くて良い。すれ違う登山客に何度か足袋のことを聞かれた。

登り始めの一歩目を踏み出したとき。足元の落ち葉がカサカサと音を立てた。カナヘビだ。もう春が動きはじめている。田んぼではカエルが鳴く。

今日は途中休憩を挟まず、一気に山頂まで登った。最初からそう心に決めていたのだが、後半は汗をいっぱいかいてしんどかった。

45分かけて登頂。

山頂のベンチはほとんど満席。日の出から時間が経ち、眼下の風景はだいぶ霞んでいた。筑波山も好きだけど、唯一残念なのは登ったら筑波山の姿を見られないことだ(当たり前)。宝筐山はその点、手軽に登れて筑波山を間近に感じられるから良い。

体が冷えてきたら下山開始のサイン。個人的には山登りより「山下り」の方が好きだ。それは太もも前側の筋肉が発達していて、骨盤がやや後傾気味で後ろ重心であるという自分の解剖学的理由によるものだけではない。登りは「登頂」という目的をまだ達成していない段階なので、身も心も緊張している気がする。登頂後、リラックスした状態で軽やかに降りるのが楽しい。時折、足元に気をつけながら位置エネルギーに身を任せてタタターッと駆け降りる。

視界に入ってくる情報も登りのそれとは違う。セセリチョウやキタテハの飛翔、咲き始めの白木蓮の花、どこからともなく漂うヒサカキの花の匂い...

植物園の散策時と同じような感じ。リラックスしているけど、感覚が研ぎ澄まされてゆく。

山頂から麓までは30分程度で戻って来れた。心地よい疲労感。

来週もまた宝筐山でも良いし、手軽な山を登って体力を培っていきたいと思う。