今日の植物園

昼下がりに訪問。

昨日と打って変わって曇天模様で寒々しい。

ここでも梅が見頃。

今日も枝分かれや枯れ葉を見つめながら散策する。

途中、近頃はカメラの画面を通した姿しか見ていないことに気づく。

肉眼で細部の細部を凝視する感覚、一周まわって新鮮である。

いつの季節も、花は咲く。

シナマンサクが鮮やかな黄色の花を枝いっぱいにつけていた。

この木は枯れた葉を残しながら花を咲かせる。

一本の木に、過去と現在が同居する。

温室のガラスにべったり張りつく木の葉が、やけに生々しく見えた。

帰り際、出入口の看板で来月の蘭展を思い出した。その頃には園内も一層春めいているに違いない。

或る土曜日

今日は土曜日。

いい土曜日だった。

そんな気がするので、ここに書き記すこととする。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

AM

まず、目覚めが良かった。

正確には二度寝後の目覚め。

8時頃に一旦起きて朝食を食べ、歯を磨いて髭を剃り、再びベッドに潜った。

起きたら11時。

睡眠による回復もあるが、「この時刻まで二度寝している」という事実が満足感を生んでいる気がする。

着替えて外に出かける。

車で先ず郵便局に寄り、昨日受け取れなかった荷物を受け取る。

 

その後は先週と同じ場所へ梅を見に行った。

ここにはいくつもの梅の木が整然と植っている。

でも人がいるのを見たことがないので、穴場といえばそうである。

 

先週咲きかけていた木は満開といってよい姿になっていた。

まだ咲いてない木にも、今にも開きそうに膨らんだ蕾が見える。

春を感じる陽差しが花弁を透過する。

 

強い香りを放つ木に近づくと、小さな羽音が聞こえてきた。

ミツバチが花から花へと吸蜜している。

また季節が少しずつ、そして着実に進んでいる。

来週は来られないのが残念だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

PM

職場の同期2人と干し芋を買いに出かけた。

干し芋は昔からの大好物である。

生の芋にはないしっとりした食感、ぎゅっと凝縮された芋の甘味。

軽く炙ったものを冷たい牛乳と共に食するのが良い。

 

ここ茨城県はさつまいもの大産地。

いまの時期は干し芋の季節真っ只中。

一端の干し芋好きとして、買いに行かない手はない。

 

先週訪れた干し芋のお店がとても良かったので再訪。店前には、世界でもここにしかないであろう「干し芋の石像」が佇む。

店内には色も形も多様な干し芋が並ぶ。家族へ送る用に平干しの干し芋3種、自分用に丸干しの新物を買った。

干し芋は縦に薄く切られた「平干し」が多いが、小さい芋を丸ごと干した「丸干し」のものも存在する。前回訪れたときに丸干しを初めて買って食べ、みずみずしい食感と濃い甘みに衝撃を受けた。

再び食べられてうれしい。

 

芋のジェラートも食べた。先週も食べたはずなのに、その美味しさに改めて驚く。

芋だけで5品種ほどのジェラートがいつも並んでおり、食べ比べると品種によって味が大きく違うことに気付かされる。

まだ時間があるので大洗磯前神社へ寄り道することに。大洗は何度か来ているものの、神社へ行くのはこれが初めてである。

 

境内に近づくにつれ、賑やかな声が聞こえてきた。

何やら人だかりができている。

そういえば今日は節分だった。

裃を着た人が群衆に餅などを撒いている。

TVでしか見たことのない光景。これが面白かった。

定番の餅やお菓子だけでなく、手拭いや野菜果物、挙げ句の果てには米や味噌のようなものも次々と撒く(流石に重い米は投げずに手渡ししていた)。

興味本位で群衆に近づくと、たまたま胸元へ餅が飛び込んできた。不思議な高揚感と、御利益がある気がして嬉しい。

ほどほどに参加しつづけ、手拭いとスナック菓子とほうれん草(!)を手に入れた。

周囲の人たちはみな、両手に袋一杯の「御利益」を抱えている。

 

海の鳥居も見に行った。

ここ大洗にしては風が穏やかな日で、空と海は際限のない広がりを見せている。

今日の雲はどことなく軽やかな感じがした。

ずっとこの場にいられる安らぎがあった。

すでに日は傾いている。

夕焼けを追いかけるように帰路につく。

うまく言えないが、いい土曜日だった。

 

回想、2019沖縄島

何事にも、始まりがある。

最初の経験は特別なものである。

2019年夏の沖縄は初めての採集遠征だった。

虫を採るためだけに南の島まで赴くなど、大学に入った頃は思ってもみなかった。

未知なる世界の入口に立った気がして、強い興奮を覚えた。

現地では、大学3年から入った生物サークルで知り合ったクワガタ屋の某氏と行動を共にした。

いま思えば、ズブの素人である私ははっきり言って足手まといだっただろうし、ターゲットも同じクワガタなのでやりづらい部分もあったのは想像に難くない。

しかし、あの遠征が無ければはたしてその後も採集や自然との関わりを続けていただろうか。それくらい大きな転換点だったと思う。だから彼には心から感謝している。

那覇空港に着いたら、まっすぐ沖縄島北部の「やんばる」へ向かう。ヤンバルクイナヤンバルテナガコガネが生息する、生物多様性の宝庫。知識と体験が結びつきつつあることがこの上なく嬉しかった。

窓を開けると、亜熱帯気候の熱気と湿気を感じる。どこまでも広がる鬱蒼とした原生林の風景。林内の独特な匂い。今でも鮮明に覚えている。

某氏の案内で、林道沿いの沢でオキナワイシカワガエル、池で金粉模様のオキナワシリケンイモリを観察する。

足元の側溝ではヒメハブがとぐろを巻いていて、肝を冷やした。

やんばる以外の北部の各地も巡りながら、沖縄の独特な空気感を満喫する。

今回の主な狙いはオキナワノコギリクワガタ、オキナワヒラタクワガタリュウキュウコクワガタ。明るいうちにバナナトラップを仕掛ける。

翌日も晴れたので、いろいろな昆虫を観察できた。オキナワハンミョウ、オオシマルリタマムシ、オキナワチョウトンボ、ツマベニチョウ...。本州や北海道では見ない昆虫の数々に心が躍る。

しかし、このあと事態は急変する。

台風の接近により、翌日から最終日までずっと嵐のような天気になってしまったのだ。

せっかく仕掛けたバナナトラップも撤収せざるを得ず、初めての遠征でクワガタを採ることは絶望的な状況に。

仕方ないので沖縄島北端の海岸でアシブトメミズムシを探したり(いなかった)、美ら海水族館に行ったりした(マナティーが可愛かった)。

そんなこんなで気づいたら遠征最後の夜、諦め半分でダムの街灯に虫が飛来していないか見に行く。前日に比べると雨風が多少弱い。

街灯の下を見て行くと、クワガタの頭の死骸があった。少しだけ期待が高まる。

雨続きということもあり、オキナワアオガエルやガラスヒバァも出ている。

そして、周囲の草むらを丹念に見ていると、

いた。いた。

クワガタだ!!!!!

掴んだのは小さなオキナワヒラタクワガタ

諦めなくてよかった。ここまで来た甲斐があった。心の底から喜びが湧いてくる。

今だから分かる。この遠征自体もだが、この1匹を最後の晩に見つけられたこともまた、人生の転機であった。

クワガタに、南西諸島に、自然の奥深さに、焚きつけられた瞬間だった。

お決まりの風物詩

昨日の午後は梅を見た後、ある虫を探しに行った。

向かった先は、エノキの大木の下。

根本にしゃがみ、堆積した落ち葉を一枚一枚丹念に裏返す。根気を要する作業。つくばで過ごす冬は、毎年一度はこうして探している。

15分ほど経っただろうか、ある一枚の落ち葉に一匹発見。

背中の突起の数から、ゴマダラチョウの幼虫と思われる。暖かい日当たりで撮影していると動き始めた。

愛らしい顔をしていて癒される。今年も出会えて安心した。

つくばでは、毎年欠かさず会いに行く「風物詩」のような存在の生き物たちがいる。冬のゴマダラチョウオオムラサキの幼虫、春先のアマガエル、初夏のヘイケボタル、晩秋のウスタビガ...。彼らに会えると季節を実感できるし、一年間命を繋いでいたことに安心する。

ひとしきり撮影した後、幼虫と落ち葉を元に戻す。また夏に会えることを願い、その場を去った。

土曜日の朝日

車を買ってから迎える最初の週末、やりたいことは決まっていた。

いつもの場所に朝日を見に行く。

5時前。外はまだ夜が支配する。

煌々と輝く満月に照らされた。星は前回ほどは見えなさそうだ。

今までは寒さに耐えながら自転車を漕いで行っていたが、その苦労はもうしなくてよい。

 

暖房を効かせた車であっという間に到着。外気温計はマイナス4度を示している。

車外に出ると、引き締まった寒気に全身を包み込まれた。

風はほぼ無風。月から遠い空には星がよく見える。

しばらく待つと、東の空が赤くなってきた。

それは次第に白みを帯び、赤さは程なく失われてしまう。僅かな時間だが、一日において最もダイナミックな時間である。

このひとときが一日で、一週間で、最も好きだ。

手足は痛いほどに冷え切っている。

しばらく地平線を見てからそのまま少し視点を上げると、夜の部分がサーっと引き潮のように退いて見える。

朝日が夜の基層を一枚ずつ剥がしていく。

遠くでは鶏が鳴き始める。

 

残念なことに、普段の忙しない生活における朝は「時刻」でしかなく、サイクル化された日々の一部分に過ぎない。

だから、たまにはこうして朝が朝であることを確かめ、朝を五感で理解するのは大切だと思う。これからもこの感覚を失いたくない。

 

今日の植物園

2週間ぶりの植物園。

昼過ぎの日差しが暖かい。

いつも通り野菜コーナーから見ていくと、白菜やタアサイがパリッとした葉を広げている。

この時期は梅の花が見頃を迎え始める。先々週は蕾だった花が一斉に開花していた。近づくと芳香が漂う。来園者はみな足を止め、写真を撮る。

その後はいつも通り池を渡り、奥の林内を歩きまわる。

葉も花も落ちた木々は一見すると殺風景なものかもしれない。でも私には、次なる季節に向けた準備に勤しんでるように見えて、逞しさを感じる。

冬の青空は良い。木々の美しい枝分かれを映してくれる。

寒い日々が続くなか、微かな春を感じた時間であった。

再開

書いては途絶えてを繰り返していたブログを再開します。ハンドルネームもブログ名も心機一転。

「自分だけの採集記を紙の冊子で出したい」というちょっとした夢があるのですが、仕事や日々の疲れで先延ばしになりそうな予感があります。

とりあえず、目の当たりにしたときの感情や感動が風化しないうちに書き残しておくことに決めました。今までの遠征についても、回想録として書いていきたいと思います。冊子にするなら、そこに肉付けしたら良い話なので。

インスタグラムではそこそこな頻度で写真を撮っては載せ続けていますが、写真には残らないその時々の感情を忘れたくない気持ちがあります。そうなると、やはり言葉で残すことは避けて通れないと感じました。

「言葉にならない感動」も沢山ありますが、あえてそれらを言葉で表現することに向き合いたいのです。